組合せ論セミナー

 


第26回 2012年6月27日 16:30〜18:00

宮田洋行(東北大学)「マトロイド・有向マトロイドの対称性に関する考察」


マトロイド・有向マトロイドは超平面配置、点配置、多面体などを組合せ的に抽象化したものであり、今までさまざまな側面から研究がなされてきている。
超平面配置、点配置、多面体については自己同型群は古くから研究され、非常に多くの結果が知られているが、マトロイド・有向マトロイドはそれらの自然な抽象化であるにも関わらず、自己同型群はあまり理解されていない。そこで、本発表では、マトロイド、有向マトロイドの自己同型群の理解に向けた第一歩として次の考察を行う。

まず、点配置から生じるマトロイドの対称性と幾何的対称性を比較する。具体的には与えられた点配置から定まるマトロイドの対称性をいつでも実際の幾何的に対称な配置として実現できるか考える。そして、任意の非自明な回転対称性をもつ2次元点配置にある操作を行うことで、マトロイドとしては対称性を
もつが、その対称性を幾何的に実現できない3次元点配置が構成できることを示す。これは、点配置において、幾何的対称性とマトロイド的対称性には大きな差があることを示唆する。

上記の構成は、2次元ユークリッド空間では非自明な回転の不動点が一意に存在するのに対し、マトロイドでは対応する性質がないという観察をもとにして行われるが、有向マトロイドについてはそのような性質を含め、幾何的対称性の持ついい性質のいくつかがある程度自然に拡張されることを示す。
また、3次元多面体のグラフの対称性の既存研究などからも、ランク4の有向マトロイドの自己同型群が3次元点配置の自己同型群と近そうなことを見ることができることを説明する。

その一方で、2次元回転の不動点の一意性なども不適切な定式化を行うと成立しなくなるなど、幾何的な性質の有向マトロイドへの拡張はしばしば困難である。また、超平面配置、点配置、多面体などでは明らかに成立する性質でさえ有向マトロイドでは成立しない場合もあり、そのような性質についても既存研究を軽く説明する。