組合せ論セミナー

 


第37回 2013年2月12日 14:00〜15:30

奥田 隆幸(東京大学)「等質空間上の固有な作用とデザインについて」

本講演では以下の二つの事についてお話したい.

(1) 非コンパクトな擬リーマン大域対称空間 M に, 離散群 Γ が計量を保って作用しているような状況を考えよう.一般にはその商空間はハウスドルフになるとは限らない.しかし, Γの作用が固定点自由かつ固有不連続であるときには, 商空間はハウスドルフになり, 更に M と局所同型な擬リーマン局所対称空間の構造が入ることが知られている.このとき, Γは M の不連続群であるという.M に対してその不連続群がどのくらい豊富に存在するかという問題は, M と局所同型な完備局所対称空間の大域構造の分類問題と対応しており,その系統的な研究は小林俊行 [Math. Ann. 1989] に端を発する.本講演では, 非コンパクト擬リーマン半単純対称空間 M = G/H と,非コンパクト単純リー群 SL(2,R) の一様格子 Γ (曲面群) を考え,Γ が G/H の不連続群となるための (G,H) の必要十分条件とその分類を与える.

(2) 球面 S^d 上の t -デザインの構成として有効な方法の一つは, あるウェイト関数 w_d について閉区間 [-1,1] 上の t- デザインと呼ばれるものを構成し,それと S^{d-1} 上の t -デザインを``掛け合わせて'' S^d 上の t -デザインを構成するというものである (Rabau--Bajnok [J. Approx. Theory 1991], Wagner[Monatsh Math. 1991])本講演ではこの方法を一般化し, その応用として Hopf 写像 S^3 -> S^2 に注目し,「S^2 上の t -デザインがあれば, それと S^1 上の 2t -デザインとを``掛け合わせて'' S^3 上の 2t -デザイン を構成できる」ということを紹介する.特に, Kujilaars [Indag. Math. 1993] の S^2 上のデザインの構成の結果と組み合わせれば,N_{S^3}(t) の漸近挙動は t^4 で上から抑えられることが分かる (N_{S^3}(t)は S^3 上の t -デザインの最小濃度としている).ここで, S^3 はコンパクトリー群 SU(2) と同相であり, SU(2) の極大トーラスT に対して, S^2 は等質空間 SU(2)/T と同相で,更に T は S^1 と同相である.時間に余裕があれば, 「コンパクト等質空間 G/K 上のデザインとコンパクトリー群 K 上のデザインを掛け合わせれば, コンパクトリー群 G 上のデザインを構成できる」 ということにも言及したい.