D1 |
三倉潤也 Mikura, Junya |
【研究課題1】 | 免疫応答処理の有限性による多型性ウィルス個体群抑制の破綻に関する数理モデル解析 (Analysis of a mathematical model about the hazard of polymorphic virus outbreak beyond the limited performance of immune response) |
M2 |
松
岡 功 Matsuoka, Tsutomu |
【研究課題1】 | 食物連鎖におけるエネルギー栄養段階の数に関する数理モデル解析 (A mathematical model for the number of energy trophic levels in food chain) 生態系では,緑色植物などが光合成によって生成したエネルギーは,栄養段階と呼ばれる段階を移動する。第1栄養段階は光合成によりエネルギーを生成する生物,第2段階は植食動物,第3段階以上は肉食動物から成る。本研究では,数理モデルの解析によって,安定に存在できる食物連鎖を成す栄養段階の数に関しての理論的考察を行った。エネルギー生産量が植物及び植食動物の増減に依存しない,定常な環境を仮定し,第1段階におけるエネルギー生産率を一定値とする。確立する段階数は,エネルギー生産率に依存して決まり,無限の段階数も確立され得ることが,数学的に証明できる。また,存在し得る食物連鎖の長さが有限な上限をもつ条件も導くことができる。特に,各パラメータが栄養段階に依らず全て等しい場合には,無限段階数の食物連鎖は確立され得ない。この場合,可能な最長の食物連鎖において,各段階に存在するエネルギー量の分布は,必ず,下位ほど大きいピラミッド構造を示す。しかし,最上位の段階を取り除くと,ピラミッド構造は崩れる。それでも,偶奇段階のそれぞれについては,その単調性は維持されている。本研究では,栄養段階数及びエネルギー量の分布について,さらに詳細な解析結果を体系的にとりまとめた。その結果,エネルギー栄養段階については,ピラミッド構造は,必ずしも一般的とは言えないことがわかった。
発表:Length of Food Chain: Analysis of a Mathematical Model, T. Matsuoka and H. Seno, International Conference on Ecological Modelling 2006 in Yamaguchi, Yamaguchi University, Ube, Yamaguchi, Japan, 2006年8月28日-9月1日. Length of Food Chain: Analysis of a Mathematical Model,松岡功,瀬野裕美,数理分子生命理学専攻 第2回公開シンポジウム 生命科学の新展開 −生命と数理の融合−,広島大学(東広島),8月, 2006. 食物連鎖におけるエネルギー栄養段階の数に関する数理モデル解析(A Mathematical Model for The Number of Energy Trophic Levels in Food Chain),松岡功・瀬野裕美,日本数理生物学会第15回大会(2005年数理生物学シンポジウム),横浜国立大学(横浜),9月15日 −9月17日,2005. |
【研究課題2】 | 個体群削減が離散世代餌−捕食者系の動態特性に及ぼす影響に関する数理モデル解析 (Analysis of a mathematical model for the effect of harvesting on the time-discrete prey-predator population dynamics) Beverton-Holt型の密度効果をもつ宿主に対してNicholson-Bailey型の寄生を行う寄生者のなす離散時間host-parasite系に周期的な削減(harvesting)を行った場合の個体群動態の特性について解析した。寄生期間内における削減タイミングも導入した新しい数理モデルの解析の結果,削減がhostのみにかかる場合,parasiteにもかかる場合のいずれの場合も,削減を行った結果,個体群サイズがある平衡値に至る場合には,削減の強さによらず,hostの個体群サイズが増加し,parasiteの個体群サイズが減少することが示された。hostがあるpest
speciesである場合を考えると,これは,paradox of pest
controlにあたるが,個体群動態における密度効果と削減操作の相互作用によって起こるparadoxであり,削減がhostの天敵であるparasiteに及ばない理想的な場合ですらparadoxが生起することがわかった。このようなparadoxが天敵に対する影響や薬剤耐性の高い個体の増殖といった説明のみならず,個体群相互作用の特性により生起しうることが理論的に示唆された。
発表:Analysis of a Mathematical Model for the Effect of Harvesting on the Time-Discrete Prey-Predator Population Dynamics, T. Matsuoka and H. Seno, Japanese-Korean Joint Meeting for Mathematical Biology (Fukuoka, Japan), 16-18 September, 2006. 【Poster Prize受賞】 |
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【研究課題3】 (修士論文研究) |
格子空間ダイナミクスにおける空間分布の特性を繰り込んだ非標準的平均場近似モデルの考察 (A nonstandard mean-field approximation model involving the characteristics of spatial distribution in the lattice space dynamics) 移動スケールに制約のある生物の個体群動態の数理モデリングについては,その空間分布の特性が分布域全体にわたる平均個体群密度の動態に重要な寄与をもつ。そのような個体群動態に対しては格子空間モデルが有効な数理モデルとして用いられてきた。それらは,一般的に確率過程により記述されており,もっぱらコンピュータによる数値計算によって解析されるが,その数値データの理論的な理解の手法として,しばしば,全空間にわたる平均統計量の時間変動のみを差分方程式系もしくは微分方程式系により記述した(標準的)平均場近似モデルを解析した結果との対照が用いられる。しかしながら,空間分布の特性が個体群動態に本質的に重要な寄与を与える場合には,標準的平均場近似モデルは,必ずしも格子空間モデルにおける全空間にわたる平均統計量の時間変動を適切に近似できるとは限らない。本研究では,ある2次元格子空間上の捕食者−被食者系モデルを具体例として,空間分布の特性を繰り込んだ非標準的な平均場近似の開発を試みることにより,格子空間モデルにおける全空間にわたる平均統計量の特性を理論的に理解するための新しい手法の可能性を探ろうとした。提案された新しい非標準的な平均場近似は,理論的な導出によりパラメータ値で一意的に定まる,単純でありながら,格子空間モデルの振る舞いと定性的に近い振る舞いを実現することができるものであり,他の格子空間モデルにも容易に適用できる汎用的な新しいアイデアを提供しているとともに,より一般的な常微分方程式系による個体群動態モデルにおける数理モデリングにも応用できる考え方である。
発表:(準備中) |
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M1 |
久保田聡 Kubota, Satoshi |
【研究課題1】 | 競争系におけるキーストーン種の存在性に関する数理モデルによる理論研究 (Theoretical consideration on the existence of keystone species in a competition system: Analysis for a mathematical model) 複数の競争種が共存している系からの1種の削除による系の状態遷移について考える。競争種の削除によって系のバランスが崩れ,派生的な更なる種の絶滅が起こる可能性がある。そのような種の副次絶滅(secondary
extinction)が起こるか否かは,削除される種に依存して決まると考えられ,副次絶滅につながる性質をもつ種をキーストーン種と呼ぶ。本研究では, あるLotka-Volterra型 N 種競争系について, 安定共存平衡点にある系から1種を削除した場合に副次絶滅が生起する条件について検討した。全ての種において,同種に及ぼす競争効果が他種に及ぼす競争効果よりも強い場合には,どの種を削除しても副次絶滅は起こらない。副次絶滅が起こりうるのは, ある1種のみについて他種に及ぼす競争効果が同種に及ぼす競争効果よりも強く,他の種については同種に及ぼす競争効果が他種に及ぼす競争効果よりも強い場合に限る。そして,同種に及ぼす競争効果と他種に及ぼす競争効果の強さが同程度である種や競争による影響を受けにくい種が副次絶滅をより生起させ易いことが示された。
発表:Theoretical Consideration on the Existence of Keystone Species in a Competition System: Analysis for a Mathematical Model,S. Kubota and H. Seno,Japanese-Korean Joint Meeting for Mathematical Biology (Fukuoka, Japan), 9月16日−9月18日,2006. Theoretical Consideration on the Existence of Keystone Species in a Competition System: Analysis for a Mathematical Model,久保田聡,瀬野裕美,数理分子生命理学専攻 第2回公開シンポジウム 生命科学の新展開 −生命と数理の融合−,広島大学(東広島),8月, 2006. |
【研究課題2】 | 葉の平行脈の構造に関する数理的研究 (Mathematical consideration on the structure of pallarel venation in leaf) |