白い眼をしたカブトムシ達



(2004年2月)

趣味の一つでカブトムシの飼育をしていたのですが、 幸運にも島根県で白色眼突然変異体(白い眼をしたカブトムシ)が発見され たことを知りました。 さらに幸運にも、ここに生物学科の中谷先生が コオロギの白色眼突然変異体についての研究をされたこと があることを知りました。 このような幸運が重なり、早速、中谷先生の助言のもとに、 この変異個体を遺伝的に分離する実験を始めました。

子供のころに飼育した経験がある方も多いと思いますが、 通常、カブトムシは孵化から羽化まで1年掛かります(成虫は夏前に 生まれて夏が終わる頃には死んでしまいます)。 しかし、この実験では3世代後まで飼育しなければいけないので、 飼育期間を短縮させるために23度前後での恒温飼育しました。 このようにすることによって大体8ヶ月前後で成虫になります。 もちろん、実験室もありませんので、自宅の1部屋(6畳洋室)を 実験室にしました。 この時点では実験が成功するかどうかは私には分かりませんでしたので、 研究室にカブトムシを置くことは考えませんでした。

このようにして飼育実験は始まりました。 第1世代は少数でしたので規模的にも問題なかったのですが、 第1世代を交配させるときには7ペアの産卵セットを用意しました。 先のことを考えればこの時点ではまだまだ規模的にも小さく楽しめる範囲でした。 その後、第2世代が孵化したときには幼虫飼育数が3桁になり、 スペース的にも段々難しくなり (サイズが47cm×34cm×25cmのボックスが20個ほどになりました!)、 1、2週間に一度の糞取りとマット交換 が苦痛になりました(笑)。 特に、カブトムシを置いている部屋が2階だったために、 この作業はマットの詰まった重いボックスを外に運ぶという重労働でした。

飼育を続けて第2世代が、予想していた通りの比率で通常個体と変異個体 が羽化してくれましたときは本当にうれしかったです。 また、実際に手にする白い眼をした個体は非常にきれいで感動しました。 さすがに白い眼の個体が羽化するまではどうなるか分からなかったので 自宅で飼育してきたのですが、 この辺りで研究室の一部にカブトムシを置かして貰うことを教室にお願い しました。 その後、中谷先生が眼の組織に関する実験をしていただき、最終的に 原稿にまとめることになりました。 第3世代では、すべてが白い眼をした個体になりましたので、 これで完全に遺伝的に分離出来ました。

現在は、これ以上自宅1室を実験室にすることも出来ませんので、 通常の温度による飼育に戻しましたので、夏のシーズンにしか 白い眼をしたカブトムシ達は羽化しませんが、今後も飼育を続けて行く 予定です。興味のある方はご連絡ください。研究室に持って行きます。 夏以外のシーズンは写真をお見せできると思います。

実験開始からおおよそ3年を費やしました。 今まで一番時間の掛かった研究になったような気がします(どの時点 から研究を始めているかの判断は微妙ですが)。

(2006年2月追記)
この実験結果を含めて詳しくまとめたものが、 中谷勇氏および久保田伸夫氏との共同論文 「カブトムシの白色眼突然変異体」として 山形大学紀要(自然科学編)、第16巻、39−45(2006) に掲載されています。

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