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ワークショップ情報

第59回ワークショップ

【投稿日】2017.03.22

概要

日時: 2017年3月7日㈫ 16:30–17:30
場所: 青葉山キャンパス 情報科学研究科棟 2階大講義室
備考: 情報科学研究科研究科重点プロジェクト「数学と諸分野の協働推進による学際的・総合的な新領域研究の開拓」第12回講演会を兼ねています。

プログラム内容

16:30–17:30

富安 亮子 氏 (山形大学理学部/JSTさきがけ)

講演題目

格子とその結晶学への応用

概略

結晶学は固体物質のミクロ構造の情報をどのように得て処理するかという観測の問題を扱う分野で、実験物理と、各実験装置に付属するデータ解析(最適化、ときに第一原理計算まで含む)ソフトウェアアプリケーションがその基盤を支えている。数学上の意味で困難な問題も存在することから、計算面において様々なアプローチがこれまでになされてきたが、情報科学分野との連携はまだ発展途上と言える。数学分野との連携については、およそ100年前に結晶学が創始されて以来、格子パラメータを記述するために格子基底簡約理論が、消滅則を記述するために結晶群に関わる群論が導入されたなど数多くの事例があり、この他の事例については割愛するが、結晶群の記法において、一つの空間群に対して複数の記号が対応してしまうという問題を解決するため、新しい記法が Conway, Thurstonらによって提案されたのは近年のことである。この事例が示すように、この分野では解析・ソフトウェアアプリケーションにおける障害として、数学としては基本的な(でも新しい)問題が残っていることがある。 今回は主に消滅則の話である。230通りの空間群に対して、およそ1700通りの消滅則が発生するが、コードを書く際にそんなにたくさんの場合分けはできないので「この消滅則に共通する性質は何か?」という問題が発生する。消滅則は、数学的に言えば、multiple invariant theoryの問題とも言えるが、この分野を牽引したHilbertの第14問題と、必要とされている「性質」の間の距離は遠く、そこで、異なるタイプの「定理」を計算によって見つけてきた、というのが、得られた結果の趣旨である。この話が、整数論の結果とも絡めて「格子ベクトル長さの情報から格子を決定する(粉末指数付け)」という問題に応用される。定理自体は、電子顕微鏡など、消滅則に関わる一般的な問題に使用することができる。

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