Updated 24/12/2012
Since 05/05/2012

2012年京都大学数理解析研究所共同研究


Kyoto Winter Research Program in Mathematical Biology Next Wave 2012

数学と生命現象の連関性の探求
~  新しいモデリングの数理  ~

平成24年12月17日 (月)〜 12月21日(金)

於  京都大学数 理解析研究所111号室


日本数 理生物学会後援



全日程を無事盛会の内に終了しました。 参加者および関係者の皆様,お疲れ様でした!

「古きを訪ねて新しきを知る」とは,芸術では もちろんのこと,学術においても,常にその発展の機動力となってきたプロセスの一つであることは疑うべくもありませ ん。生命現象に関する数理的研究においても,古典的な数理モデルが,様々な場面,多様な分野で見直され,新しい分野 を切り開く標(しるべ)となってきました。本学術集会は,生命現象に対する古典的数理モデルの本質に触れ,そこから 現代の息吹を生み出すことを目指します。
 生命現象における数理モデリングは,生物学的知見と数理的解析を基に,生命現象に潜む構造を明らかにする手法で す。この手法は,生命現象そのものあるいは実験的事実を基に,対象とする生命現象の側面と数理の間の連関性を見いだ し,数理モデルを立て,解析を行い,結果を議論するというものですが,この一連のプロセスにおいて忘れてならないの は,生命現象と数理 モデルの間には必然的な乖離が存在するということです。その上で,数理モデル解析から得られる理論的結果と生命現象とのギャップを科学し,そこに潜む論理 を,数理モデリングによる生命現象と数理の間の連関性を基にして,見出すことに全力を注ぎます。こうしたプロセスが 数理モデリングの本質であり, 乖離を越えて現象と数理モデルを関係づけます。得られた結果が現象とうまくマッチしない場面に遭遇することもありますが,この状況こそが数理モデリングの 醍醐味であり,威力を発揮する場面です。数理モデリングによる研究の更なる発展には,モデリングにおける数理技術の 発達と,数理モデリングのセンスの向上が欠かせません。
 本学術集会では,生命現象における新しい知見の獲得を目的とした理論的手がかりの創造,及び,新しい数理モデルの 開発や解析技術の発展に寄与することを試みることを目指して企画されたプログラムに取り組みます。



1  目 的

数学は,他研究分野の更なる発展の可能性を生み出すだけではなく,他研究分野から創出される数理的 問題によってそれ自体も大きく発展する学問です。 生命現象に関する数理的問題もそのように数学の学問発展に寄与してきたことは歴史が示す通りです。生命科学の時代とも呼ばれる21世紀が開いて10年余を 経過し, 実際,生物学・生命科学の諸問題に関わる数学理論及び数理モデル理論の更なる発展に対する期待はますます大きくなっています。 モデリングとは,科学的な“ものの捉え方”といえます。 生物学・生命科学の諸問題に対する数学的基盤を整備し,学際・融合分野における数理的研究を発展させ,それらを生命現象の研究にfeedbackする一連 の過程はすべてモデリングと考えてよいでしょう。 モデリングの観点から新しい生物学・生命科学研究及び数学研究を促進・創発するというインセンティブは,これからもますます意義が高まると考えられます。 この学術集会は,数理分野の研究者と生物学・生命科学研究者が集い,発展性が高いテーマや未解決問題を発掘すると同時に, 生物学・生命科学の分野における新しい知見の獲得に向けた新しい数理モデルの開発や解析にかかわる数理的な理論の展開,新しい数学的概念の構築を促すこと を目的とし,数理分野の研究者と他研究分野との学際的・融合的研究の契機を提供することを期するものとして企画されたものです。

2  特 色

2002年−2004年 に開催された「イッキ読み合宿セミナー」(幹事:齋藤保久),2004年,2005年に京都大学数理解析研究所にて開催された京都大学数理解析研究所短期 共同研究「生物数学イッキ読み・研究交流」(研究代表者:齋藤保久)は,すべて,文献を読むだけにとどまらず様々な議論が飛交う場を成 し,生物数学の研究に新たに提起される問題の発掘や参加者同士の共同研究が発足するポテンシャルの高いものでした。その肥沃な“土壌” に,生命現象に関わる問題とその数理モデル開発という“種”をまくべく企画された以下のような学術集会が本集会の前身として開催されてき ました:

 
これらの共同研究では,多様なバックグラウンドをもつ若手研究者が一堂に会し, 共通の話題についての数理モデルの開発や解析が現場で行われるプログラムが実施されました。参加者は話題提供者(セッションオーガナ イザ)と事前打合せを行い, 集会を通じて,分野融合的研究としていくつかの新しい研究もスタートしました。 参加者には,数学・数理科学分野の大学院生のみならず,若手研究者,一線級研究者が含まれており, 本共同研究の目的に合う指向が広く存在することが明示されており,その意義が裏付けられています。 2012年度開催の本学術集会は,2006年〜2011年開催の上記共同研究の経験を踏まえた,さらに発展したものを目指していま す。

本学術集会の意義は,特定の問題について数理モデルの開発や解析に関して討論を展開し, 数学−他分野融合研究の可能性を追求するところにあります。 昨今,欧米で盛んに行われるようになった若手研究者対象の生物数学関連のスクール形式とはまたひと味違う, 研究レベルの出席者参加型の本プロジェクトは学際研究の発展に寄与できるユニークな形態であり,本集会の大きな特色の一つです。 

3  プロジェクト企画・運営者

瀬野裕美【代表者】(平成24年10月に異動しました)
東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻      
980-8579   宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3-09        
Phone & fax022-795-4614
Email      

齋藤保久【運営幹事】
島根大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻
690-8504   島根県松江市西川津町1060
Email

佐藤一憲【企画協力】

静岡大学工学部システム工学科      
432-8561   静岡県浜松市中区城北 3-5-1        
Phone & fax053-478-1212        
Email      

4  募集定員

30名程度(企画内容の事情により,事前 登録のない参加は 原則としてお断りします;参加登録については下掲)


5  参加費

無料


6  実施内容・日程

本学術集会では,生物学・生命科学の分野 における様々な数理モデルの基礎となっているpopulation dynamics(個体群動態)の数理モデルの発展を概観する文献[下掲参照]を用いた集中(“イッキ読み ”)セミナーを参加者自身 の参加によって行います。このセミナーは,招待講師も含めたオーガナイザーによる4つのセッションによって構成され,各セッションは,関連する生物学・生 命科学あるいは数理科学の問題を抽出し,その問題の解決に向けての新しい数理モデル開発を目標にして,数理モデリング及び解析手法・ 解析理論を参加者相互の議論により検討し,問題の意義・価値について討論を行うことを主旨とします。 その後,セミナーでの議論をふまえて,未解決問題や新たに提起されるであろう諸問題について数理モデルの開発と解析を参加者の共同研究形式で議論するとい う,新しい生物数学研究の発展を期すためのプログラムを実施します。
 セミナーにおける参加者個々の分担については,参加者確定後,本プロジェクト代表者より(本集会開催以前に) 通知させていただき,参加者各自にセミナーの準備をしていただきます。セミナーにおいては,参加者各自が各 セッションで議論する文献で取り上げられる題材の内容を極限まで理解し合い, 数学と生命現象の連関に身をもって触れることによって,参加者同士の濃くざっくばらんな研究交流を促し,新たな問題の“匂い”を嗅ぎ取る感覚を研ぎすます ことが図られます。本集会では,過去の一連の集会(上記「特色」欄参照)同様, 後半において,参加者が数グループに分かれ,グループ毎に,セミナーでの議論をシードにして新たな問題の発掘を行い,その問題に対する数理モデルの開発お よび解析に取り組んでいただきます。そして,最終日,各グループの研究成果を発表していただき,コンテスト形式にて審査します(審査 員の審査により優秀グループを表彰します。いわば,ロボコンならぬ“モデコン(モデル・コンテスト)”です。 もちろん,決して,競い合うことを奨励するものではありません)。 それらの研究成果については,京都大学数理解析研究所の講究録としてまとめることを最初の目標とします。 本集会で予定されているスケジュール概要は以下の通りです:


午 前
午 後
12月17日(月)

受付・説明
セッション1
セッション2
懇親会
12月18日(火)
セッション3
セッション4

12月19日(水)
セッション5
懇談会
Group Discussion  
12月20日(木)
Group Pre-Presentation
Group Discussion
12月21日(金)
Final Presentation
Closing
※このスケジュールは, 今後,調整によって多少の変更もありえますのでご注意ください。 開始および終了日時については確定しています。 変更については,適宜更新を行います。

■ 集中セミナー文献:

Bacaër, Nicolas, 2011.  A Short History of Mathematical Population Dynamics, 158pp., Springer, London.

ISBN 978-0-85729-114-1
Go to: Springer web site
Go to: Amazon.co.jp  Amazon.com

■ セッション&オーガナイザ:

1. 「黎明期の数理モデリング再考[Chapter 1 〜 Chapter 6]」齋藤保久(島根大学)

2.【招 待講演】小泉吉輝・本田一暁:「カロリー制限」の進化的意義に関する数 理的考察
2011年度「生物現象に対するモデリングの数理:Kyoto Autumn Research Program in Mathematical Biology Next Wave」受賞グループ

3. 「発達期の数理モデリング再考[Chapter 7 〜 Chapter 14]」佐藤一憲(静岡大学)

4. 「成長期の数理モデリング再考[Chapter 15 〜 Chapter 21]」今 隆助(宮崎大学)

5. 「20世紀の発展期における数理モデリング再考[Chapter 22 〜 Chapter 26]」時田恵一郎(大阪大学)


7  参加申し込み

参加申込書を電 子メイルにて, 運営幹事齋藤保久()までお送り下さ い。

参加申し込み締め切 り日:平成24年10 月31 日 (水)
(これ以降の参加申し込みについては運営幹事あるい はプロジェクト代表者までお問い合わせください。 なお,事前登録のない参加は原則としてお断りします)

参加費は無料ですが,本集会の企画セッションへの参加のため,上記の集中セミナー文献については,参加者各自に入手をお願いすること になります。集中セミナー文献の入手に関する情報も含め,参加申込者の方には,逐次,本集会についての詳細を別途お知らせ致します。

なお,学生(PDを 含む)参加者の方には旅費の一部補助ができる可能性があります。

問い合わせは,代表者瀬野裕美,あるいは,運営幹事齋藤保久までお気軽にお知らせ下さい。